トーキョーウジキントキ(かき氷専門ブログ)

日本(と世界)のおいしいかき氷を実食&レポートするブログです。2003年スタート、2022年に「かき氷は【夏以外】がおいしいことを伝える」をコンセプトにリニューアルしました。

進化するかき氷店:鵠沼海岸「埜庵」(後編)

埜庵
神奈川県藤沢市鵠沼海岸3-5-11 TEL : 0466-33-2500
営業時間:11:00 - 18:00  定休日:毎週月曜日

食べたのは……2007年8月
主な値段は……抹茶 700円

天然すいか、天然白桃、白葡萄……と新作フルーツかき氷をいろいろ紹介しましたが、最後にご紹介したいのがこれ。

shaved ice with green-tea

「抹茶」700円。埜庵の抹茶氷/宇治金時をいただくのは、まだ鎌倉にあった時から数えて3回目か4回目だと思うんですが……いやぁ、びっくりしました。

一口食べると、ガツンとお濃茶の味インパクト。かき氷を食べているんだけど、お濃茶をいただいているような感じなんです。味が濃いけど渋くない、お茶の旨みが濃厚に出ている抹茶蜜がとにかくおいしくて、「うわー、おいしいなあ」と感心しながらいただきました。濃厚な抹茶氷をひとしきり味わったあと、添えられた練乳をかけて抹茶ミルク氷にしていただくと、練乳の味に抹茶が負けることなく、両方が合わさってさらにおいしいんです。

今年の抹茶氷、私にとっては今までで一番おいしかったです。今までの抹茶/宇治金時もおいしかったんですが、埜庵さんの場合は、ほかのメニュー、特にフルーツを使ったかき氷があまりにおいしいので、正直なところあまり印象に残らなかったんですよね……。でも今年の抹茶氷は、ストライクゾーン直球ど真ん中、って感じ。

抹茶を変えたのかな、それとも量を増やしたのかなと思って聞いてみたら、石附さんはニヤリと笑って「抹茶は変えてないし、量も増やしてないよ。抹茶の量をただ増やしても、渋くなっちゃっておいしくないからね」との返事。むーん、とするとシロップの量の調整ではないかと思うけど、それでこんなに差が出るモノなんですね……と感心しきり。ううむ、かき氷って本当に奥が深い。

そろそろおいとましようかな、なんて思っていたところ「最後にこれだけ味見していってよ」と出していただいたものなので、よほど自信があるんだなあとは思っていたのですが……一口食べた瞬間「あっ、やられた」って思っちゃいましたもん。(何がやられたんだ?)さんざんかき氷を食べたあとだったのに、気がついたら溶けた最後まで飲んじゃって、すっかり完食してました。ううむ、やっぱりやられてる。

☆ ☆ ☆

ところでこの埜庵というお店では、秩父で作っている天然氷を使ったかき氷を出している、というのは以前にも書いたとおり。ご主人は年末年始の時期は、秩父阿左美冷蔵という氷室で氷作りをしています。
※本家・阿左美冷蔵についてはこちらを参照

以下ちょっと、いや、かなり気になる(心配な)お話を……。

去年、関東地方は記録的な暖冬だったことを覚えている方も多いと思います。実はわたくし、内心「天然氷は大丈夫なのかなあ……」と気になっていたのですが、結論からいうと「全然大丈夫じゃなかった」。関東で天然氷を作っているところというと、日光と秩父の名前が挙がるのですが、どちらも大変厳しかったそうです。

通常、秩父では1月が氷を採るのに一番忙しい時期。1月上旬に1回、1月下旬に1回、合計2回採るのが通常なのに、今年は1月はまったく駄目で、2月に入ってから初めて氷が採れたのだとか。しかもその氷も非常に薄くて10センチ程度、例年の3分の2くらいしかなく、機械でなく手で切ったのだそうです。結局、採れた量は例年の半分以下だったので、「天然氷のかき氷屋」にこだわる埜庵さんとしても、純氷を使わざるをえなかったとの話でした。もともと秩父は日光より生産量が少ないのに、今年は暖冬の影響で氷の生産量が例年よりかなり少なかったため、埜庵さんをはじめとして、十条「だるまや」さん、埼玉・しらこばと水上公園「水庵」さんなど、秩父の天然氷を使っているお店はどこもかなり困っているとのこと。すでに今年、埜庵で出しているかき氷は、秩父の天然氷ではなく日光の天然氷でほぼ回しているそうです。

以前「埜庵のご主人より伝言」と書いたとおり、今年は8月11日〜19日のもっとも混む時期と、毎日300杯を超えた分は、天然氷ではなく純氷(氷屋さんが作って売っている氷)でのかき氷を提供する予定とのことでした。

私はもともと東京生まれなのですが、自分が子供だった頃に比べると、東京の冬は寒くなくなってきているなあと思います。雪が降る回数も明らかに減ってますし。ものすごく厳しい寒さはたしかにつらいけど、でも冬はやっぱり寒くないと冬らしくないし、最近は暖かい冬の年は「天然氷を作ってるところは大丈夫かなあ」と気にかかるようになりました。盛夏のさなかにそんな心配をするのも何ですが、今年の冬はちゃんと寒くなるよう、お祈りしています。