トーキョーウジキントキ(かき氷専門ブログ)

日本(と世界)のおいしいかき氷を実食&レポートするブログです。2003年スタート、2022年に「かき氷は【夏以外】がおいしいことを伝える」をコンセプトにリニューアルしました。

「食事氷」と対峙して、かき氷の進化をしみじみ感じた@氷匠ル・クレール(奈良)

すみませんすみませんすみません、「毎週火曜か水曜に更新」をうたっておきながら、3週間も更新をサボってしまいました。ごめんなさい~!!!

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新宿タカシマヤ「春の美味コレクション」

……と、冒頭から謝罪で始まりました今回のトーキョーウジキントキ。今回ご紹介したいのは、現在新宿タカシマヤで行われている催事「新宿高島屋美味コレクション」に出店されている、奈良県の「氷匠ル・クレール」さんです。

ラインナップがすごすぎる!

今回の催事では、cocoo cafe(大阪)、ヨリドコロヒヨリ(京都)、ウミネコパーラー(金沢)と関西の人気店が多数出店しているのですが、その中でも最も”攻めてる”メニューを持って来たのがル・クレールさん。

 どれくらい攻めてるかって?まぁ見てくださいよ。

・4月7日 高級食材シリーズ オマールエビチー(1杯) 4,500円
・4月8日 高級食材シリーズ 至高のトマト氷 スカーレットティアーズ(1杯) 3,000円
・4月9日 高級食材シリーズ 鮑氷(1杯) 4,500円
・4月10日 新定番サラダシリーズ サラダ ド ニソワーズ(1杯) 1,800円
・4月11日 特選食材シリーズ 奈良いちご新品種氷「三味三様」(1杯) 2,500円
・4月12日 高級食材シリーズ キャビアフラッペ氷「ミニ」キャビア90g使用(1杯) 45,000円

 

 ……どうですか、これ。値段もびっくりですが*1、何より使ってる食材がすごい!オマール海老にアワビ、キャビアって、どう考えてもかき氷に使う食材じゃない。ニソワーズとは「ニース風サラダ」、トマトとかオリーブやアンチョビが入ってるサラダだったはず。ええーっと、かき氷ですよね……?

 タカシマヤのかき氷催事は事前Web予約制。ボンヤリしているうちに気付いたらもう予約は埋まっていたので、「今回も行けなかったなー」と思っていたら、親切な関西のかき氷愛好家の方が予約チケットを譲ってくださり、行けることになりました。

 そんな僥倖があって、私が食べてきたのは、こちらっ。

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「高級食材シリーズ 至高のトマト氷 スカーレットティアーズ」、1杯3000円です。

 作っていただいている間、かき氷機の手前に並んでいたトマトの写真を撮らせていただきました。宮城県マルセンファームの希少品種「玉光デリシャス」という品種なのだそう。糖度が10度以上、果物のように甘~いトマトで、タネも少ないもの。

 

至高のトマト氷 スカーレットティアーズ

 ていねいに、しかし手早くつくっていただいた至高のトマト氷がこちら!

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至高のトマト氷 スカーレットティアーズ(氷匠ル・クレール)

 サイズは中くらい。昨今、大きなかき氷が増えていますが、個人的にはこれくらいがちょうどいいなと思うサイズ。デパートの催事といっても、食器も持ち込みなんですね。見た目もおいしそうだし、やはりちゃんとしたカトラリーは口の中で余計な味がしないのでかき氷の味を純粋に味わえる気がします。

 

 トップに載っているのは、カットした玉光デリシャス。確かに種がほとんどなく、甘くて味が濃い!これは完全にフルーツだわ~。

 エスプーマももちろんトマトです。同じくマルセンファームの「スカーレットティアーズ ゴールドラベル」というトマトジュースが使われているのですが、これは玉光デリシャスの大玉を絞った糖度10度以上の果汁100%ジュース。年間150本しか作られないものなのだそう。トマトジュースそのものの甘みを生かしたエスプーマになっていて、これまた実に美味しい。

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 カットトマトだけ食べても、エスプーマと一緒にトマトを食べてもトマトの味を堪能できるし、たまに上にのっているゼリー(シャンパンみたいに、口に含むとシュワシュワします)と一緒に食べると食感がかわってまた楽しい。

 まわりにはオリーブミルクシロップがかかっており、これがまたほんのり薄甘くてトマトと一緒に食べると実にいい塩梅。

 中に仕込んだチーズムースがふわっと甘く、さらに食べ進むと中から再びカットトマトとともに、モッツァレラチーズが現れます。ちょっと塩を効かせたバジル+オリーブオイルのソースがかかっていて……あっ、なるほど、カプレーゼなのね。モッツァレラチーズはもうちょっと小さくカットした方が食べやすいかなと思ったものの、でもこれ、おいしいなあ。かき氷でカプレーゼ、アリですね。

 全体的に、デザートにしては甘さ控えめ、ほの甘いけど料理っぽい構成で「なるほど、食事氷とはこういうことか」と納得しながらもぐもぐいただきました。

 

私が勝手に感動していたワケ

 このかき氷、おいしいのはもちろんなんですが、しかしそれよりも「いま、私はすごいものを食べている、かき氷の進化ってここまで来たのか……」と妙に感慨深くて、食べながらひとりで妙にしみじみしてしまいました。

 パスタやラーメンにかき氷を載せたものは結構昔からあったんですが、そういう「料理にかき氷を載せたもの」と、今回のル・クレールのように「かき氷を料理として再構成した食事氷」は完全に別もの。そして後者は非常に新しい、これまでのかき氷の進化を踏まえた上での最新のかき氷だと思うんです。

 コロナ禍ですっかり定着したWeb事前予約制とか(しかも全部しっかり埋まっている!)、上でちらっと触れた通り、デパートの催事なのに、使い捨て食器でなく、普段お店で使う食器で、高価なかき氷を提供するとか、こういう実施の仕方も含めたいろいろな意味で「令和4年の日本のかき氷文化はここまで来たんだなぁ」と思わされた、ル・クレールのかき氷でした。

おまけ:2018年の「Tarte au poire 洋梨シルバーベルのタルト“糊こぼし”」

 ここで終わっても良いのですが、せっかくなのでもう一つ紹介させてください。

 実は私、2018年の2月にも、ル・クレールさんのかき氷を食べてるんです。2018年に奈良で「かき氷EXPO2018」というのが行われたんですが(この話も本当はブログで紹介したかった!今さらって言われそうだけど!!)、その時提供されていたのがこちら。「Tarte au poire 洋梨シルバーベルのタルト“糊こぼし”」です。

Tarte au poire 洋梨シルバーベルのタルト“糊こぼし”

Tarte au poire 洋梨シルバーベルのタルト“糊こぼし”(氷匠ル・クレール)

 糊こぼしってなんだろう?と思ったら、奈良ならではの粋なネーミングでした。

 奈良・東大寺の二月堂では、三月一日から「お水取り」が行われるのですが、その前(つまり二月)に行われる前行のときに、祭壇に椿に似せた造花が飾られるそうなんです。その椿の花びらには糊をこぼしたような白い斑点があって、それを「糊こぼし椿」と呼び、この時期、奈良の和菓子屋さんではこれにちなんだ和菓子をつくるのだそう。そこで、ル・クレールさんもかき氷で糊こぼし椿を表現してみた……というのがこのかき氷。

 このかき氷、タルト・オ・ポワールという名の通り、ベースは洋梨のタルトのような味。上に載っている可愛らしい赤いお花は、洋梨のコンポートを色づけしたもの。ほかにも砕いたナッツやサブレ、ゆずピールなど、食感いろいろなものが仕込まれていて、見てかわいく食べておいしいかき氷でありました。

 

 この時以来、4年ぶりにいただいた氷匠ル・クレールのかき氷。次こそはお店で食べたい!とこれを書きながら改めて思いました。ごちそうさまでした!

*1:しかもタカシマヤ側のルールで、2人以上では入場できない。要はシェア禁止で1人1杯はマスト