トーキョーウジキントキ(かき氷専門ブログ)

日本(と世界)のおいしいかき氷を実食&レポートするブログです。2003年スタート、2022年に「かき氷は【夏以外】がおいしいことを伝える」をコンセプトにリニューアルしました。

雪くまめぐり2006(5):“かき氷で町おこし”に思うこと

「日本一夏が暑い町」熊谷市が町おこしの材料に選んだのが“かき氷”。かき氷を“雪くま”と称してオリジナルのかき氷を各店に開発してもらい、市内外のお客さんに提供しようという試みだった訳ですが、今回数カ所で食べた結果、私が思った素直な感想は「このままじゃあ、この町おこしは失敗だろうな」でした。



雪くまを出しているお店は、「雪」の字が目印。写真は「慈げん」の店先です

かき氷専門でwebサイトを立ち上げて、今年で4年目。ここ1〜2年、かき氷を見る目が変わってきているのかなあと思います。最初のころはそれこそ「かき氷だけのWebサイトなんて、なんと物好きな」という感じの反応が多かったんですが、最近「紹介されてるところに行ってみたら、ホントにおいしくてファンになりました」とか、「すごくおいしかったので私もブログに書きました」というコメントをいただくことが増えたんですよね。実際、精力的にかき氷を食べ歩いているブログもいくつか見かけるようになってきて、「ああ、おいしいかき氷には人を惹きつける力があるんだなあ」と思うようになりました。

個人的な話で恐縮ですが、私がそもそもトーキョーウジキントキを立ち上げた大きなきっかけは、秩父阿左美冷蔵のかき氷を食べて、「ああ、世の中にはこんなにおいしいかき氷があるんだ」と驚いたことにありました。かき氷といえばお祭りの縁日で売っているような「頭がキーン&舌に色が付くシロップ」といったイメージが一般的。だけど、“氷のプロや甘味処が真面目に作っているかき氷は、頭が痛くなることもないし、ほんとにおいしいんだ”ということを、一人でも多くの人に伝えたい。そう思いながら日々更新しています。

阿左美冷蔵さんとか、鵠沼海岸の埜庵さんとか、軽井沢のシブレットさんといった、おいしい天然氷を使っているお店には、遠くてもリピーターがついています。遠くても、一年に数回食べにいく人も珍しくないんですよね。かき氷を目的にそこへ行く、そう言わせるだけのかき氷が世の中にはいくつかあるわけです。

そして、ここで雪くまの話に戻ります。

☆ ☆ ☆

最初に書いた通り、このままの雪くま企画では県外からのリピーターはまず付かないでしょう。いくつかの店舗で雪くまを食べてみて、そう思った理由が二つあります。

一つめは、市がしている“雪くま”の説明と、実態が一致していないことです。熊谷市では雪くまを

1.熊谷のおいしい水を使った氷を使っていること
2.氷の削り方に気を遣い、雪のようにふんわりした食感であること
3.オリジナルのシロップや食材を使っていること

と説明しています。今回雪くまを出している全てのお店で「普通のかき氷と雪くまはどう違うんですか?」と聞いたんですが、どのお店でも答えは「シロップがそれぞれのお店でオリジナルであること」でした。雪くま以外にもかき氷メニューがあるところでは「氷のかきかたが特別なんですか?」とも聞いてみたんですが、答えは「いえ、他のかき氷と一緒です」でした。
#さすがに熊谷の水を使った氷かどうかまでは聞かなかったので……。

つまり、「氷の削り方に気を遣い、雪のようにふんわりした食感」かどうかは、ひとえにそのお店の技術次第。普段からふんわりしたかき氷を出しているお店であればふんわりした雪くまを作ってくれますが、元々ガリガリかき氷のお店では、それは望めないわけです。お店によっては普段かき氷はやっていなくて、雪くま企画に参加しているお店の場合もあるわけで、そういうお店の場合はもちろん、ガリガリ氷が普通に出てくる確率が高くなります(全てのお店で食べたわけではないので断言できませんが)。実際に熊谷に行くまでは「雪くまというのは、ふんわりした氷でオリジナルシロップなんだ」と思っていたので、これに気付いたときは、ちょっと悲しかったです。

理由二つめは、一つめと少し重なる部分があるんですが、「店のレベルが違いすぎる」ということ。上記のようにオリジナルのシロップ、という線だけは守られているようですが、あとは完全にお店次第。おいしいお店に当たればいいですが、中には驚くほどまずいものもありました(ここでは紹介しませんが)。

おいしいお店に当たればいいけど、もし県外から交通費や時間をかけてやってきて、あまりに酷かったらガッカリだし、「二度と来ない!」と思うでしょう。町おこしを目指しているのであれば、やはり1〜3の説明通りの商品で、ある一定レベル以上のかき氷を、どのお店でも出すべきだと思うのです。こういうのって低い方に引きずられがちなもの。ちゃんと真面目にやっているお店がこれでは可哀想です。

熊谷の雪くま企画は8月いっぱいと聞いているので、そろそろ終わっていると思いますが、もし来年やるのなら、市として、もうちょっとちゃんと取り組んで全体のレベルを上げて欲しい。熊谷市で雪くまの企画をした人は、「氷をかいて、変わったシロップをかければ町おこしができる」と安易に考えているのではないでしょうか。実際には、たとえ同じ貫目氷を使ったとしても、かき氷のできあがりは人によって違います。かき氷機の刃の角度、氷の温度、器への氷の盛り方……などなど、つくる人の技術やつくりかたで、できあがったかき氷の味や食感が変わる要素はたくさんありますから。

こんなちっぽけなサイトですが、かき氷を応援しているblogとしては、「かき氷で町おこしなんて、やっぱり無理だった」なんて結末にはなってほしくないんです。来年もこの企画を続けるつもりがあるのなら、その前に一度、企画担当者にホントにおいしいかき氷を食べてみてほしいと思っています。熊谷は東京から見れば遠い。でも、秩父よりは近いです。熊谷の雪くまがホントにおいしくて、他にはないものならば、遠くても足を運んでくれる人はきっと出てくるし、リピーターが必ず付くはずですから。